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  法人化のメリット・デメリット  
   
           
   

 開業の際、組織形態を法人にするか個人にするか。これは経営者にとって迷いどころです。また、すでに個人事業者として開業されている方が法人成りをするタイミングの判断も同様です。今回は法人化のメリット・デメリットとそのタイミングについて考えてみたいと思います。

 以前は最低300万円の資本金が必要でしたが、平成18年の新会社法施行により、現在は法律上では資本金が1円でも株式会社を設立することが可能となっています。つまり、以前ではある程度の自己資金を持っていなければ選択の余地などなかったのですが、現在では誰でも比較的簡単に会社をつくることができることから、選択の幅が拡がりました。
法人のメリット・デメリットをいくつか掲げてみます。

- メリット -

● 給与所得控除の活用
法人であれば代表者であるあなたも給与所得者となります。現在、給与には年間の総収入金額に対して所定の金額を控除したものを所得とする制度があり、例えば年間の給与総額が1000万円なら220万円を控除した780万円が所得となります。個人事業で1000万円の儲け(売上−経費)があれば当然1000万円が所得ですが、法人を設立してその1000万円の儲けを丸々社長の給与として支払えば、会社の所得は0円、社長の所得は780万円となり、大きな節税効果を生みます。ただし、民主党政権はこの不均衡を是正する制度を検討していますので、今後の税制改革論議の動向を注視する必要があります。

● 退職金の支給
退職金規定を作成して、それに則って支給すれば代表者や役員の退職金を、全額経費にできます。また、事業承継の際にも関連しますが、退職金の効果的な活用によって、自社株式の評価額を下げることもできます。退職金の支給を受ける方も、退職金に対する優遇された税制により納税が少なくて済みます。
さらに退職金規定に死亡退職金や弔慰金・見舞金の取扱いを規定しておけば、相続税の優遇措置を受けることもできます。

● 赤字の7年間の繰越
青色申告をすることが条件ですが、個人では赤字を3年間しか繰り越せません。法人では7年間繰り越すことが出来ます。

● 消費税の納税義務の最大2年間の免除
法人のメリットというには少し色合いが違いますが、法人成りの際、資本金が1000万円未満なら最大で2年間(2期分)消費税の納税が免除されます。

● 社会的信用
取引先、金融機関に対する信用が増します。ただし、ある程度の資本金(最低300万円ほど)は必要でしょう。資本金が1円の場合信用面の効果はありません。また金融機関も、無条件に法人を個人よりも信用するというわけではなく、法人ならば当然個人よりも経理がしっかりしていて、作成される決算書もちゃんとしているはずと捉えていると言うことです。

● 人材確保
一般的に会社の方が個人よりもよい人材を確保しやすいと思います。

● 事業承継
個人事業として承継するよりも、株式として承継する方が有効な対策を打ちやすいです。

- デメリット -

● 均等割の納付
法人の場合は赤字でも毎事業年度、均等割という地方税を納付しなければなりません。都道府県税が20,000円、市町村民税が60,000円(又は50,000円)です。

● 税率
法人の所得に対する税は基本的に一定税率(約40%)、個人の所得に対する税は累進税率(約15%〜50%。所得が多くなるほど税率が高くなります。ちなみに地方税は一定税率)のため、所得が少ないうちは所得税の方が税率は低いです。ただし、メリットで記載した給与所得控除の活用によって、デメリット部分を調整することはできます。

● 交際費の損金算入の制限
経費として認められる交際費に一定の制限があります。ただ、資本金が1億円以下の法人については、年間支出額が600万円まででしたらその支出額の90%が経費となりますし、飲食費等で1人当りの支出額が5000円以下のもの(社内交際費等は除きます)については、一定の書類を保存していれば、別立てで全額経費に出来ますので、大きなデメリットではないと思います。

● 設立費用
設立するための登記費用がかかります。専門家に依頼すれば手数料が別途必要です。また、個人から法人成りをされた方は、許認可や届出が必要な業種の場合には、新たに法人としての許認可等の手続きが必要な場合が多いです。

● 社会保険の強制加入
個人事業の場合でしたら、従業員が4人までなら適用事業所になるかどうかは任意なのですが、法人なら必ず社会保険の適用事業所とならなければなりませんので、負担が増します。

● 経理事務の厳格化
経理事務や労務管理等が、法人ではより煩雑になります。それらの処理が正しく行なわれているかどうかの確認のため、税務署、労働基準監督署等の立入調査の頻度も増します。また、経理事務や労務管理等を税理士、社労士等の専門家に依頼すれば、当然その分負担は増します。

- まとめ -

いかがでしょうか。開業の時から会社組織にするか、個人で始めるか、さらに法人成りのタイミングはその起業家の個人的背景や業種業態にもよると思います。しかし、結論がこれではわかりにくいので、「あくまでも個人的な見解」と前置きした上で、あえてまとめてみたいと思います。
結論からいうと、ある程度の資金(上にも記していますが最低300万円くらい)があるなら基本的には創業時から会社組織にする方がいいと思います。ただし、営業面から考えると、業種や開業の形によっては個人事業から始めるのも選択のひとつです。そして、個人事業で始めた場合の法人成りのタイミングは、業種にもよりますが売上規模が3000万円〜5000万円になった時でしょうか。
もう少しくわしく説明します。
税制面では、どんな規模でも法人組織にした方が有利と言えます。規模が小さいうちは給与所得控除のメリットを活かせますし、規模が大きくなって利益が増えてくると、税率が逆転し、所得税よりも法人税の方が、税率が低くなるからです。均等割のデメリットも給与所得控除のメリットでカバー出来ます。また、赤字を7年間繰り越せるのも大きなメリットです。
信用面では、取引先に対しても、金融機関に対しても法人の方が高いのは間違いありません。もちろん、何度も記していますが、あまりにも資本金が少ない場合は問題があります。
さらに個人的には、ある意味最も大きな法人化のメリット(個人であることのデメリット)だと考えているのが、人材確保の件です。これは、税制面などでのメリットとは違い、数字などではっきりとわかるものではないので、実感しにくいのですが、特殊な場合(例えばその方がカリスマ○○で有名とか)でない限り、優秀な人材を確保しにくいと言えます。
事業承継の面からも個人として承継者に引き継ぐより、法人化して株式として引き継ぐ方がより有効な対策を打つことが出来ます。特に平成20年に経営承継円滑化法が施行され、これに伴い事業承継に対する税制も整備された(平成21年度税制改正)ことから、親から子へなどの親族内承継なら、株式の評価額を大きく減額することができるようになります。
これらが、基本的に創業時から会社にした方がよいと考える理由です。
では、個人事業として始めても問題ない状況はどのような状況でしょうか。
会社の規模が小さいうちは、税制面のメリットを経理事務等の厳格化のデメリットが打ち消してしまう場合があります。節税してもその分手数料で消えてしまうという状況ですね。
この場合、他のメリットの部分で判断することになりますが、まず、税理士等の報酬を単なる節税のための事務代行ではなく、コンサルタント的な意味合いでの報酬と考えるなら、税制面のメリットと経理事務の厳格化のデメリットは切り離して考えるべきでしょう。記帳代行以外にどれだけ付加価値をもたらしてくれるのかが大事ということですね。
また、創業当初から人材確保の必要があるなら、法人化すべきでしょう。逆に言えば、自分だけ若しくは家族だけで事業を立ち上げるなら、個人事業でも問題ないことになります。
営業面から考えると、顧客が一般の消費者なら法人個人はあまり関係ないかもしれません。例えば飲食業などは、お店の名前で世間に覚えてもらいますので、そのお店が法人か個人かはあまり問題とはなりません。ただし、この場合でも、仕入業者に対する信頼については考慮しなければなりません。所属していた企業から一部分独立という形で創業される方も、創業当初は顧客がいらっしゃるでしょうから、独立が法人が前提ということでない限りは、個人での創業も構わないのではないでしょうか。
法人個人のどちらの形態が良いかは、総合的には法人が有利ですが、個人で始める方が良い場合、または個人で始めても問題のない場合もあります。充分に検討して判断するべきでしょう。しかし、どちらにせよ事業が継続し拡大していくにつれ、法人化が必要になることは間違いありません。

 
           
     
※上記コラムは平成23年8月1日現在の法令に基づいて作成しております。
上記コラムはあくまで個人的見解により作成しており、上記コラムにより発生したいかなる損害に
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